十歳の男の子に拾われました

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十歳の男の子に拾われました

 尚に置いていかれて、回りを見渡しても、目に入るのは果てのない草原。  どっちに行けばいいのかもわからない。  私はあてもなくトボトボと歩き始めた。  せめて、街ぐらいあってくれればいいのに。  少しでも方角がわかればと、一応お日様を見る。沈んでいく方が西。もちろん西に向かって歩いていくことが正解なのか間違っているのかもわからない。  でも、お日様に向かって歩けば、少しは長い間明るいかもしれないよね。  あれ? この世界でもお日様って東から昇って西へ沈むのかな。  どちらにしても、お日様向かって歩くと決めた。これで行き倒れたら、私を見捨てた尚のせいだ!!  お日様に向かって歩き出すも、さっきから全然進まない気がする。  何で? 私、前に進んでるよね?  思わず足下に目を向ける。  あれ? 私の足ってこんなに小さかった?  嫌な予感がして、目の前で手を広げる。  え? 小さくない?  記憶の中にあったはずの私の体とは大きく違っていた。  なんで? 私、縮んじゃってる!  確かに元々背は低かったけど、これは完全に子供の体だ。  いつの間に? 尚と話してた時はどうだったっけ?  一人きりで黙々と歩いていると、どんどん涙が溢れてきた。  私、なんでこんなところを一人で歩かなきゃいけないの。どうしてこんなことになっちゃったの? どこまで、いつまで歩けば良いの? 「もう、やだぁ。なんで、こんなことになったのぉ」  体が小さくなった理由を考えても、まるでわかるわけもなく、諦めて先を進もうと歩き始めた。  立ち止まったってどうしようもない。  歩いていけば、何か見えるはずだよ。  うん……きっと。  気を取り直して小さい足で一歩ずつ進んで行くけど、草原しか見えないこの場所を歩いていくうちに襲いかかってくるのは、どうしようもない絶望感。  もう、街とか贅沢言わない。村は? 家は? せめて、人に会いたい! 「誰か、いないのぉ?」  そう私が呟いた時、後ろの方から音が聞こえた。何かが揺れる様な聞いたこともない音に、何の音かわからず、恐る恐る後ろを振り返った。  馬車だ! と言っても、お伽話に出てくる様な豪華なやつじゃなくて、いわゆる荷馬車。それが私の後ろを通って行くのが見えた。  のどかな田舎道を通っていそうな馬車。  有名な歌とは違って、荷台に乗っているのは仔牛じゃなくて、人間の子供だったけど。馬車が通っていくのを見ていると、荷台に乗っている男の子と目が合った。  待って! 助けて!! そう叫びたいのに、さっきまで泣いていたせいか、うまく声が出ない。やっと見かけた人を見過ごしちゃう! 「トウサン! トメテ!」  荷台に乗っていた男の子が馬の手綱を握っていた男の人に向かって何かを叫ぶ。その声を聞いて、馬車が停まった。 「ドウシタ?」 「オンナノコガ、アルイテルヨ」  馬車に乗ってる二人の間で会話が交わされる。  ただ、流れ聞こえてくる言葉は、どれ一つとして理解できなくて。  何で? 何を話してるのかわかんない。  さっき、尚と話したときは、理解できたよね。私の言ってることも通じたし。  尚と繰り広げた会話を思い出しても、どこも変なところはなかった。  それなのに、何で今はわかんないの?
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