十歳の男の子に拾われました

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 荷台での私の席は、りょくの隣。  ガタガタと揺れる体をなんとか抑えつけて、座ってるだけでせいいっぱい。  身体中がいろんな所にぶつかって、痛みで顔をしかめる私に、りょくが身振り手振りを交えて何とか話をしようとしてくれた。  りょくと髭面の男の人は予想通り親子で、どうやら家に帰る途中だったらしい。  他にもたくさん話しかけてくれたけど、やっぱり聞き取ることはできなくて。もちろん言葉も通じなくて。  何で尚の言葉はわかったんだろう。  尚の言葉は日本語だったし、私だって何も考えずに話をしてた。  スマホなんかに頼ろうとする前に、もっとちゃんと話をすればよかった。  そしたら、もっと色々教えてもらえたかもしれないのに。  この世界の言葉を話すこともできない。上空から突然落ちてきた不審者の私の言葉を、ちゃんと聞いてくれた。  もっと問い詰めたいことはあっただろうに。  「はるか。モウスグツクヨ」  考え込んでた私とは裏腹に、荷馬車は淡々と目的地までの道のりを進んでいたらしい。  顔を上げて周りを見渡せば、少し先に家らしきものが見える。  やっと見つけた、人が生活する空気に、心の底からホッとした。それと同時に、りょく達親子に対して申し訳なさを感じる。  付いて行っても大丈夫か、ずっと疑ってた。  本気で私に害を加える気なら、もっと人気のない所でやってるよね。  ここまで連れてきてくれたってことは、その気は少ないはず。  疑って、ごめんね。  安心したところで、改めて自分の体を見渡す。  どう考えたって、小さくなった手、ひょろっとした足。りょくのことを見上げる目線は、身長の低さを明確にしてる。  やっぱり私、小さくなってるよね。  それなのに、体のサイズに合った服。それも、元から着てたものよりも、全体的に簡素になってる気がする。  どこでこうなったっけ。    私、飛行機に乗ってて、日本に帰る途中だった。気がついたら空から落ちてて。それで尚に助けられて……って私、もしかして、転移とか? 転生とか? 今流行りの小説みたいな……それ?  まさか、私、死んでたりしないよね?  飛行機に乗ったのは覚えてるけど、事故とかにあったりしてないよね?  大丈夫……だよね?    あれ? でも、転移って姿形そのまま異世界に飛んでくるんだっけ?  転生は? 当然異世界へ生まれ変わる。  そしたら、体が小さくなった今の私の状態って何?  考えれば考えるほど頭が痛い。  わかんないことだらけのこの場所で、自分のことすらわかんないなんて。  もう駄目だ。考えたって無駄だ。私じゃあどうせわかんない。  それよりも何よりも、とにかくここで生き抜くしかないよ。  りょく達に見捨てられない様に、何とかやっていこう。  まずはそれが最善!
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