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荷台での私の席は、りょくの隣。
ガタガタと揺れる体をなんとか抑えつけて、座ってるだけでせいいっぱい。
身体中がいろんな所にぶつかって、痛みで顔をしかめる私に、りょくが身振り手振りを交えて何とか話をしようとしてくれた。
りょくと髭面の男の人は予想通り親子で、どうやら家に帰る途中だったらしい。
他にもたくさん話しかけてくれたけど、やっぱり聞き取ることはできなくて。もちろん言葉も通じなくて。
何で尚の言葉はわかったんだろう。
尚の言葉は日本語だったし、私だって何も考えずに話をしてた。
スマホなんかに頼ろうとする前に、もっとちゃんと話をすればよかった。
そしたら、もっと色々教えてもらえたかもしれないのに。
この世界の言葉を話すこともできない。上空から突然落ちてきた不審者の私の言葉を、ちゃんと聞いてくれた。
もっと問い詰めたいことはあっただろうに。
「はるか。モウスグツクヨ」
考え込んでた私とは裏腹に、荷馬車は淡々と目的地までの道のりを進んでいたらしい。
顔を上げて周りを見渡せば、少し先に家らしきものが見える。
やっと見つけた、人が生活する空気に、心の底からホッとした。それと同時に、りょく達親子に対して申し訳なさを感じる。
付いて行っても大丈夫か、ずっと疑ってた。
本気で私に害を加える気なら、もっと人気のない所でやってるよね。
ここまで連れてきてくれたってことは、その気は少ないはず。
疑って、ごめんね。
安心したところで、改めて自分の体を見渡す。
どう考えたって、小さくなった手、ひょろっとした足。りょくのことを見上げる目線は、身長の低さを明確にしてる。
やっぱり私、小さくなってるよね。
それなのに、体のサイズに合った服。それも、元から着てたものよりも、全体的に簡素になってる気がする。
どこでこうなったっけ。
私、飛行機に乗ってて、日本に帰る途中だった。気がついたら空から落ちてて。それで尚に助けられて……って私、もしかして、転移とか? 転生とか? 今流行りの小説みたいな……それ?
まさか、私、死んでたりしないよね?
飛行機に乗ったのは覚えてるけど、事故とかにあったりしてないよね?
大丈夫……だよね?
あれ? でも、転移って姿形そのまま異世界に飛んでくるんだっけ?
転生は? 当然異世界へ生まれ変わる。
そしたら、体が小さくなった今の私の状態って何?
考えれば考えるほど頭が痛い。
わかんないことだらけのこの場所で、自分のことすらわかんないなんて。
もう駄目だ。考えたって無駄だ。私じゃあどうせわかんない。
それよりも何よりも、とにかくここで生き抜くしかないよ。
りょく達に見捨てられない様に、何とかやっていこう。
まずはそれが最善!
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