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episode1
「やっべ!俺、数学の宿題やってねぇや」
「まじかよ、ヤバすぎだろ」
「誰か見せてくれるやついねぇかな?」
そんな人いるわけないって……
見せても自分に利益ないからな。
「黒田~」
わざわざそんな人の成績あげる人いないって
「おーい?黒田?聞いてんのか?」
いつまで探してんだよ……
って、え?今、黒田って言わなかったか?
「黒田って……僕のこと?」
「何言ってんだよ?黒田って言ったらお前しかいねぇだろ」
黒田悠人。
どこにでもいる、平凡な学生の名前。
紛れもない、この僕の名前。
「何か用……ですか?」
「数学の宿題写させてくれよ」
「え?あ、どうぞ」
何やってんだよ、僕。
あれだけ渡す人のことを批判しておいて、
自分は渡すとは……
情けねぇな
「でも、どうして僕に?」
「えぇ~?なんか、宿題やってて、見せてくれそうだったから」
どこからそんなのを感じ取ったんだよ、バカやろう
っとゲンコツを喰らわせたいけれど、
僕はそんな事出来ない
「なんで……ですか?」
「真面目そうな顔してるし」
人を見た目で判断するな!
っとまたもや心の中で一喝。
「そうですか……写したら返してくださいよ」
「分かってるって!」
中学校生活が始まって、もう2年がたったのにもかかわらず
僕には友達という友達がいない。
いらないと、僕が突き放してきたからだ。
どうせ中学校を卒業すれば切れる短い縁なら、つながなくていいだろう?
「黒田?答え写してる?」
「そんなわけ……」
「マジか、頭いいな、お前」
「え?」
「答え写してなくて一問間違えは天才だろ」
「あ、ありがとう……ございます」
「ほらよっ!サンキュ」
「は、はぁ」
拍子抜けするようなこと言うなよ……
投げて返すのはどうかと思うけど
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