episode2

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ー帰宅ー キーンコーンカーンコーン 「さようならー」 珍しいことに、僕のクラスではほとんどの生徒が部活をしている。 部活に入っていないのは、僕を含め五人ほど。 まぁ、そんなことはどうでもいい。 鞄の奥にしまっておいたラムネを口に放り込んで 長い帰り道を歩く。 電車で行けば三十分もかからずにつくのに、 僕は毎日、徒歩で登校している。 季節、場所、時間によって、別世界にいるようにころころと変わる景色が、割と好きだからだ。 毎日、その時の気分によって、 音楽を聴いたり、小説を読んだりしながら帰る。 ザワザワとうるさい中学生の話し声や笑い声は 次第に消えてゆき、 海辺の自宅に近づくたびに 工場の作業音や波の打つ音の騒がしさが帰ってくる。 「悠人くん、おかえりなさい」 「ただいまです」 おかえりなさいって言われたら、なんて返すのが正解なのだろう? ただいまはなれなれしすぎるし、 ただいま、ですはおかしいよな 毎日挨拶を交わすたびに思っていたが、 だんだん堂々とただいまですって言ってればそれが定着するのではないかと考えるようになり、わざわざ迷う必要が無くなった。 ガチャ 「ただいま……」 「……」 返事は返ってこない。 なぜなら誰もいないから。 母は、僕を産んですぐに他界したらしく、 僕は、母親の顔も知らない。 父は…… やめよう。父のことを思い出すのは。 父の音楽も、もう過去のもの。 父が遺したものなんて、どうだっていい。 中学生で一人暮らしは哀れだと、可哀想だと言われる。 でも、生きていけてるのだから何の問題もない。 あの時、後を追って、僕も死ねばよかったのだろうか…… 僕は中学生に入る前の春休みに……
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