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episode4
父の仏壇には、炊き立てのご飯とビールを注いだジョッキを綺麗に並べ、
横に申し訳程度の桃を添える。
季節外れだが、父は桃が大好きだったため、供えるものとして、桃以外に案が浮かばないのだ。
学校から帰ってすぐに炊いた線香はもう燃え尽きていて、ろうそくの灯も、米粒よりも小さいくらいになっていた。
もう一度線香を焚き、りんを鳴らす。
誰もいない狭い家に綺麗なりんの音が鳴り響く。
「いただきます」
冷たくなったご飯とカチコチのハムカツを交互に頬張る。
上手くも不味くもない。
時間の無駄だと思いながらも、
誰からもメッセージが来ないLINEのトーク画面を眺める。
ある日ポッと誰からかメッセージが来ないものか。
毎日確認はしているが、
ここ数週間、まともに連絡も取りあっていない。
そんなものだ。
父がいたころは、毎日父の帰りをまだかまだかと待ち、
父からのメッセージがくると飛び上がって喜んでいた。
父とのトーク画面はもう2年ほど更新されていない。
数少ない中学校の友達も、必要以上の会話を交わすことなんてない。
馬鹿馬鹿しい。自分でもわかっている。そんなことは。
だから、学校ではあまりLINEは見ないんだと嘘をついているのだから。
「ごちそうさまでした」
毎日同じように起きて、同じように学校に行って、
同じように帰ってきて、同じようにご飯を食べ、
同じように勉強し、同じように寝て、また同じように起きる。
可もなく不可もない日々の繰り返し。
同じような日々に面白さなんて見出せるわけがない。
まとまりのない僕の生活。
そんな僕の生活は、また明日も変わらず続く。
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