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episode5
ー朝ー
ピピピピ ピピピピ
目覚まし時計の機械的な音で目覚め、
ぼさぼさになった髪をわしゃわしゃとかき回し、
安定しない足取りで一階に降りる。
またしょうもない今日という一日が始まる。
昨日床に脱ぎ捨てた制服にアイロンを当て、
優等生の僕になるために制服に腕を通す。
学級委員のバッジが付いた僕の名札は、こんな生活をしている人間には見合わない。これがまた、家での僕の格好の悪さが際立つ。
玄関に近づくたび、足取りは重くなるが、
何とかやる気を奮い立たせて、学校へ向かう。
「悠人くん、いってらっしゃい」
「いってきます」
いってらっしゃいと言われるのは、お帰りなさいと言われるのほど困らない。
いってきます、はおかしくないから。
そんなしょうもないことを考えながらの登校は、
下校の時の調子と変わらない。
でも、こんなにも足取りが遅いのはなぜだろう……
別に僕は、学校のことは嫌いではない。
家に居ても、学校にいてもすることは変わらない。
ただただ平凡な生活を送るだけ。
「よっ!」
「お、おはようございます」
「昨日はサンキューな」
「あ、いえいえ」
昨日の人だ……名前は、なんだっけ?忘れた
同級生の名前も忘れるなんて……
「おーい!智樹ー!行くぞ!」
「りょー。じゃあな、黒田!」
「え、あ、はい」
そうだ、中田智樹、だっけ?確かそんなだった。中田か田中か。確か中田だった気がする。
今日学校に行ったら確認しよう。
そろそろ覚えないと……学級委員に名前を覚えられていないのは気の毒だ。
「あの……」
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