色の灯をさがして

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 もうすぐ夏がくるような予感がする日だった。授業中に気になるほどザーザーと降っていた雨がすっかり晴れ、水に照らされるアスファルトを見つめて歩く。 「ほら、香澄ちゃん、空を見て」  見上げると、ぼやけた線が空に広がっていた。 「あれは何?」 「虹だよ。知らなかったの?」 「うん」 「綺麗でしょ?」 「うーん……どうだろう」 「虹ってね、色が七色あってとっても綺麗なんだよ。虹の美しさがわからないなんて、可哀想」  その言葉に絶句した。今まで庇ってきてくれた未奈ちゃんでさえも、そんな言葉を投げかけるなんて思ってもいなかった。  その日から、私は意識的に未奈ちゃんを避けるようになった。未奈ちゃんと話さない日々は暗かった。でもそんな日々は長く続かなかった。  私にだけ見える人が見えるようになった。きっと幽霊だろう。 「あれ、君は僕が見えるの?」  こくりと頷く。 「じゃあ、僕はまだ死んでない?」 「たぶん、死んでると思う」  そういうと、幽霊は悲しそうな顔を浮かべた。  それからもいろいろな幽霊が見えるようになった。話し相手をなくした私にとっては少し嬉しかった。  でも、いつの間にか教室の雰囲気が暗くなっていた。  未奈ちゃんが不登校になったのだ。
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