色の灯をさがして

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 未奈ちゃんがいない教室は卒業まで続き、私はいつの間にか中学生になっていた。 「最近、未奈ちゃんと話してなかったよね」 「香澄ちゃんが避けてた感じだったし」 「不登校になったの、香澄ちゃんが原因なんじゃない?」  未奈ちゃんは皆んなと仲が良かったためか、いろいろな人から責められた。そう言われたら確かに、私のせいなのかもしれない。未奈ちゃんの不登校が私のせいという恐怖と、皆んなに責められる恐怖が入り混じって学校へ行くのを躊躇う日々が続いた。  学校から帰る道で、背の高い女性から声をかけられた。 「観月香澄ちゃん?未奈と仲良くしていた」 「はい。そうですけど……」  未奈ちゃんのお母さんだ。とうとう、お母さんにも責められるのか。そんな恐怖で、次の言葉を待った。 「実は、未奈はずっと病気で入院していて……」  その言葉を聞いた瞬間、一瞬モヤモヤとしていた心が晴れた。そう安心した刹那、急にお母さんが泣き出した。 「先日、その病気で未奈が亡くなりました。未奈と仲良くしてくれて、ありがとうございました」  言葉を失った。もう未奈ちゃんがこの世にいない、という事実が信じられなかった。 「伝えてくださって、ありがとうございました」  そんな言葉しか出てこなかった。未奈ちゃんのお母さんに深々とお辞儀をして、私はトボトボと歩きだした。  今まで、未奈ちゃんがいなかった時間を多く過ごしてきたのに、その時間とは全く違う時間軸を過ごしているようだった。気が気でなかった。家に足を踏み入れた瞬間に大声をだして泣き叫んだ。この場所なら泣いてもいいだろう。この姿を未奈ちゃんに見られたらどう思うだろう。あれだけ未奈ちゃんを避けてきたのに、やっぱり私は未奈ちゃんが好きだった。もう会えないという事実が悔しくてたまらない。もう一度会いたい。ただ一声をかけてくれるだけでいい。啜り泣き、気がつくと眠っていた。目が覚めたのは、聞き覚えのあった優しい声が耳に響いたときだった。 「香澄ちゃん」
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