12人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうだったんですね。」
俺達の時とはだいぶ違う。今はカップルでエントリーするのが当たり前だし、カップルでのグランプリを目指すことに醍醐味みたいなのがある。
「でも集計作業がめちゃくちゃ大変だったみたい。男子は貴島くんがダントツだったからまだいいけど、女子はかなり票が割れて20人くらいがほとんど同じ得票数で2票の差で私がグランプリに選ばれたんだよ。」
瀬川さんで2票差って…。
かわいい女子がいっぱいいたのかな。
「貴島さんはやっぱりモテてたんですか?」
俺が言うと瀬川さんはうなづいた。
「そりゃあのルックスだからね。すごく優しいし、気が利くし。みんな好きになるよね。私もそのうちの一人だったし。」
「え!?じゃあもしかして、当時貴島さんと瀬川さんって…」
俺と萌香みたいに付き合っていたのか?それなのに松田なんかに恋しちゃったのか?
「ナイナイ!貴島くんは当時すでに絶賛片想い中だったから。私それに気づいちゃったんだよ。だって好きだったらやっぱり目で追うじゃない?そしたら貴島くんは“あの人のことを好きなんじゃないか”って気づいてね。」
そう言えば貴島さん、同じグランプリの子に片想いを言い当てられたって言ってたな。
でもそんな裏話があったなんて。
「なんか、切ないですね。好きだからこそ、相手の片思いに気づいちゃうなんて…」
「それがそうでもないのよ。」
瀬川さんはメガネを掛け直しニヤリと笑った。
なんか色っぽいを通り越して怪しい微笑みだ。
「違うものに目覚めたから私。それが今の仕事にも繋がってる。」
「違うもの…って?仕事は、確か瀬川さんは漫画家なんですよね?貴島さんから聞きました。」
俺は意味が分からず訊いた。
最初のコメントを投稿しよう!