お姉ちゃんの姿をした得体の知れないなにか

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「入れ物を失った魂はどこに行くんでしょうね?」  お姉ちゃんがわたしの耳元で囁いた。その声には隠しきれない嬉しさが滲み出ていた。  それがトドメだった。力を込められなくなったわたしは崩れ落ちるように膝をついた。地面が冷たい砂利石で膝が痛いのなんて気にもならない。  こいつに言われて人形の声を聞いた時を思い出す。機械の声じゃないと違和感は覚えた、なのに、どうして分からなかったんだろう。あれは、お姉ちゃんの声だった。お姉ちゃんがわたしに助けを求めていたんだ。 「さっさと自分で処分しようとも考えたんだけどね、雑に燃やしちゃったら魂が戻ってきちゃうかもしれないでしょ? でも、供養って形で無理やり成仏させてしまったら戻って来れないから。手伝ってくれて、ありがとう」  気味が悪いから捨てたい。一緒になって訴えたのはわたし。もし急かさなければ、こいつの言う期限は終わってお姉ちゃんは元通りの体に戻れていたかもしれないのに。  わたしが、お姉ちゃんを燃やす手伝いをしてしまった。  耐えきれなくなったわたしは地面に手をついてボロボロと大粒の涙を流した。周りの人が心配そうに見ているなんて気にもせず、大声で呻きながら、何度も何度もお姉ちゃんに謝った。  ごめんなさい。お姉ちゃん。わたしが、わたしが、ごめんなさい。  そんなこと欠片も気にかけず、リマはわたしの傍にしゃがんだ。 「ああ、そうだ。あの子最後に、最近妹にきつく当たっちゃう。仲良くしたいのに、どうしてもイライラしちゃう。どうしたら良いんだろう。って悩んでたわ。本当に優しい子」  わたしの両肩に優しく手を置きながら、リマはお姉ちゃんのモノマネを交えながら大袈裟に感情を込めてねちっこい話し方で言う。 「私のお願いを聞いてもらったんだから、最後のお願いくらいは聞いてあげる。これからお姉ちゃんと仲良くしましょうね。柚花」  わたしは力いっぱいその手を払い除けた。そのまま突き飛ばそうとしたけど、ひらりと躱されてしまい、わたしは尖った砂利の上に強か身体を打ち付けた。 「私は幾田凛花。柚花のお姉ちゃんの凛花なのよ」  リマはケタケタと笑いながら、歌うように言う。立ち上がれずに泣き続けるわたしの周りを、踊るようにクルクルと回り続けた。  いつまでも、いつまでも。
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