お姉ちゃんの姿をした得体の知れないなにか

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「次はどうしよう?」  どの方法でもお姉ちゃんの正体を暴けず、わたしは自分の部屋で頭を抱えた。こうしている間も偽物のお姉ちゃんは自由気ままに生きていて、本物のお姉ちゃんはどこかで不自由を強いられているのだと想像すると、焦燥感で心が一杯になってしまう。  わたしのせいで。わたしがコックリさんに願ったりするから。  ――コッコッ 「入っていい?」  部屋のドアをノックする音に続いて、お姉ちゃんの声が聞こえた。 「……良いよ」  わたしは少し考えてから答えた。  本当はお姉ちゃんの顔を見たくない。お母さんや他の人の目があるならまだしも、部屋の中で二人きりなんて何をされるか分かったものじゃない。でも、もしかしたら、ドアを開けたら本物のお姉ちゃんが入ってくるかもしれない。なんて、淡い期待してしまう自分もいる。 「開けるね」  そんな甘い現実があるはずもなく、入ってきたお姉ちゃんはやっぱりニコニコ笑顔の偽物だった。  何も言わずに、わたしのベッドに座る。本物のお姉ちゃんは他人がベッドに座るのを嫌ったから、わたしのベッドにも座ったこと無いのに。 「ねえ、柚花」 「何?」  微笑むお姉ちゃんに、わたしは警戒心を剥き出しに睨みながら返す。 「色々おかしなことをしてるみたいだけど、何か私に隠し事してない?」  顔は貼り付けたようにニコニコ笑顔のままなのに、その声は凍てつくように低く、重くて、わたしは心臓を掴まれたようにゾッとした。 「そ、そんなことないよ。それより、そ、そっちこそ、何か隠してるんじゃないの?」  無理やり喉から振り絞った声はあまりに弱々しく消え入るようで、あからさまに怯えていますと白状しているようなものだった。 「姉妹で隠し事なんてあるはず無いでしょ」  お姉ちゃんの顔で、お姉ちゃんの声で、偽物のくせに姉妹だと口にした。お前なんかと姉妹のはずがない。  わたしの中で恐れを覆い隠すほどの怒りが湧き上がってくる。 「嘘つくなっ! 知ってるんだよ! お前はお姉ちゃんなんかじゃないっ。わたしがコックリさんで呼んだ何かなんでしょっ?」  床を踏み抜かんばかりに力を込めて詰め寄るけど、お姉ちゃんは少しも揺れ動く気配もなく、涼しい顔でこちらを見上げてくる。 「コックリさん? なにそれ?」  とぼけた顔で首を傾げた。白々しい。  お姉ちゃんはベッドから立ち上がると、 「ほら、どこからどう見てもあなたのお姉ちゃん、幾田凛花でしょ?」  言いながらその姿を見せびらかすようにクルクルと回ってみせた。 「私は凛花。あなたのお姉ちゃんなの」  その挑発以外の何物でもない行動に、わたしは更に怒りを増していく。  このお姉ちゃんの偽物を殴って本物のお姉ちゃんが帰ってくるのなら、今すぐに勉強机の椅子を持ち上げて殴っただろう。殺せば帰ってくるのなら、今すぐ机の上の鋏で刺し殺しただろう。  でも、そんな確証はどこにもない。  力を込めすぎて震える拳をぶつける場所すら分からない自分の無力さに、唇を噛みしめる。涙が溢れてきそうになる。
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