クラウスside④

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クラウスside④

 狼獣人の血がメルヒオールを『番』だと叫ぶ。俺はその本能に抗う事は出来ない。やっと見つけた俺の『番』。出会えるかどうかもわからなかったが会えたんだ。絶対に離すものか!  街の外へと出るとメルヒオールの匂いを辿り走り抜ける。彼の補助魔法があるわけじゃないから、あの時ほどのスピードは出ない。だが狼獣人の血を引く俺はそれなりに身体機能を上げる術を持っている。それを限界まで上げ、全速力でただただ走った。    どれほど走り続けているかわからないが、体が、特に足が痛みだした。いくら強靭な肉体を持つ獣人の血を引いているとはいえ、俺の体は人間だ。多少他の人間より頑丈なことは間違いないが、無理をして走れなくなって匂いが辿れなくなるのは困る。一度止まり休憩を挟むことにした。  水と回復薬を飲み、疲れを感じる足を揉む。気休めにしかならないが、少しでも疲労が取れるよう出来ることはなんでもした。そしてまた俺は走り出す。
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