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クラウスside③
もうこんなに近くにいたのか。疲労と血の匂いで俺の鼻もおかしくなっているようだ。側に近寄られるまで気が付かなかったなんて。大木の陰に隠れて身を隠しているがきっとドラゴンは俺のいる位置などお見通しだろう。
「諦めてたまるかっ……!」
力の入らなくなっている体を叱咤して木の陰から木の陰へと素早く移動する。だがその時ちらりとドラゴンへ目線をやれば目が合った。その時のあいつの表情はまるで楽しそうににやりと笑っているかのようだった。
ドラゴンの腕が振り上げられた。俺にはそれを避けるだけの力がない。もうここまでか……。
そう諦めかけた時、ドンッ! という凄まじい音と共にドラゴンが吹き飛んだ。
「は?」
何が起きたのか全く分からなかった。目の前にあった巨体は無様な姿で地面に転がっている。
「えいっ!」
『ガァッ……!!』
そのままとんでもない速さで上から何かが落ちて来た。そしてドラゴンの頭部がぐしゃりと潰れる。最後に呻き声を上げたドラゴンはピクリとも動かなくなってしまった。
「大丈夫!?」
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