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クラウスside④
ドラゴンの頭部から何かが凄まじい速さでこちらへと駆けてくる。俺は警戒し身を強張らせた。逃げることはもう出来ないだろうが諦めたくはなかった。少しでも隙がないか目を凝らす。
こちらへと駆けてきた何かは一人の男だった。年頃は俺より少しだけ上だろうか。少し短い金の髪がキラキラと輝いていて、ふわりといい匂いまでする。
「凄い怪我だね。だけどあのエンシェントドラゴンからの攻撃を受けてこれだけで済んでるなんて、君は相当強いんだろうね。無事でよかった」
「っ!?」
その男が手をかざせば、その一瞬で俺の体に付いていた傷も痛みも、全て瞬く間になくなってしまった。魔法だ。俺には使う事の出来ない治癒魔法。
「あなたは……?」
「僕? 僕はメルヒオール。回復術師だよ」
「……回復術師?」
俺は少し離れた場所に転がるエンシェントドラゴンを見やる。頭部は見事に潰されていて息の根が止まっていることが傍から見てもわかる。回復術師がエンシェントドラゴンを一発で仕留めるなんてそんなことが可能なのだろうか?
ん? 回復術師のメルヒオール?
「まさか……!?」
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