クラウスside⑤

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クラウスside⑤

「あれ? 君も僕の事を知ってるの? こんな辺境の地でも僕の名前って知られてるんだね。なんだか恥ずかしいな」  メルヒオールは恥ずかしそうに頬をぽりぽりと搔いていた。  回復術師のメルヒオール。冒険者をやっていれば、いや、戦いに身を置く者であれば知らない者はいないだろう。回復術師でありながらなんでも出来るオールラウンダー。ソロで活動し、世界各地を回っている最強の冒険者。  そんな彼ならエンシェントドラゴンを簡単に討伐出来ても不思議じゃない。なら彼は間違いなく本物の『メルヒオール』なのだろう。  だがどうしてここに? そんな凄い人物とのまさかの邂逅に開いた口が塞がらない。 「この街のギルドへ寄ったら君が討伐から帰ってこないって聞いてね。もしかして、と思って来たんだけど間一髪だったね。助けられて良かったよ」 「ありがとう、ございました……あの、何かお礼をさせてほしい。命を救ってくれたんだ。俺が出来ることであればなんでもする」 「お礼? 別にいいよ、そんなの。あのエンシェントドラゴンの報酬を貰えればそれで」 「いや、そういうわけにはいかない。あなたが来てくれなければ俺は間違いなくここで死んでいた。傷も全て治してくれた。その恩を返さなければ俺の気がすまない」 「んー……君って大真面目なんだね。じゃあ、そこまで言うなら……」  メルヒオールは顎に手を当てて少し考えた後、俺の顔を見てにこりと笑った。 「じゃあ僕を抱いてくれる?」 「は?」  突拍子もないことを言った目の前の男は、それはそれは楽しそうに笑っていた。
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