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クラウスside③
それからは俺の能力をどう使えばもっとうまく立ち回れるか、そんなことも教えてくれたおかげで俺はあっという間にギルドで頭角を現すようになる。独り立ちを認めてもらえた時、ギルドマスターが持っていたあの小さな家を俺に貸し与えてくれた。
「ヴィルマン、俺は今から旅に出ることにする。家の中の物はヴィルマンに任せた。処分するなり売るなり好きにしてくれ」
今俺がこうして生きていられるのは、全てギルドマスターのおかげだ。大恩人の彼にはちゃんと納得してもらえるよう説明する義務があるのだろうが、あいにくと俺には時間が残されていない。
「は? え? 何? 旅に出る?」
「すまない、時間がないんだ。落ち着いたら手紙を送る! それじゃあ申し訳ないが俺はもう行くからな!」
「は? おい! ちゃんと説明しろっ!」
ヴィルマンの制止の声を振り切り、俺はギルドを飛び出した。彼には本当に申し訳ないことをしたと思う。
だがそれでも。メルヒオールのことを考えれば一秒でも時間が惜しかった。彼に追いつけるかは時間との勝負だ。
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