0人が本棚に入れています
本棚に追加
なんやかんやで縁があった女の子とお付き合いして、その子が俺の台所で簡単に朝ごはんを拵えてくれた。自分ではなく他人の台所なんて使いづらいだろうに、
「簡単なものだけど……」
とその子ははにかんで笑う。
焼いたソーセージと半熟の目玉焼き。昨日買ったパンを軽く温めてマーガリンを塗ってくれた。
目玉焼きをプツリと破れば、トロリと黄金の黄身が流れてくる。ソーセージを軽快な音で食い破り、パンにかぶりつけば、燻製の匂いと小麦の匂いが心地よく共存する。
──ああ、久しぶりに手料理を食べたな。
最後に食べたのは10年ほども前になるだろう。質素な朝食が今は嬉しくて嬉しくてたまらない。目の前でトーストを食べて目を細める彼女も素敵だ。とても幸せだ。
それから数年後、彼女と結婚した。
彼女も料理が好きとのことで、毎日美味しい料理を作ってくれた。俺はというと、仕事を転職したので、大好きだった料理を彼女にも振る舞う。
今度の長期休暇に、故郷へ彼女と共に帰省する。久しぶりに会う母は、幸せ太りしてしまった俺を見て、どんなに驚くことだろう。
最初のコメントを投稿しよう!