走る、光射す方へ

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 あたしの頬にはあざがある。  左頬、目の下に直径5センチほどの、紫色のあざ。  ママ曰く、生まれた時からあったらしい。  あたしが気にし始めたのは、幼稚園の時。 「きさきちゃん、けがしたの?」  友だちからの何気ないひと言から始まった。 「ううん。生まれた時からあるの」 「治らないの?」 「うん……たぶん」 「ふうん。気持ち悪いね」 ――気持ち悪い……。  おさなごころにショックを受けた。  その頃から、私は前髪を伸ばし始めた。  その“気持ち悪い”あざを隠すために。  そうしてあたしは小学5年生の春を迎えた。  友だちも作らないまま。  だって、また変なこと言われて、ショックを受けるのが嫌だったから。  今日も何も言わずに教室について、自分の席に座って、朝の会が始まるまで机にうつ伏して。  授業を受けて、休み時間はずっと突っ伏していて、特に誰とも話さないまま下校時間になる。  クラブに入っている子もいるけれど、私はどこにも所属していない。  時折、昼休み時間に合唱部の歌ううたで、ああ、綺麗だな、私も歌いたいな、と思うこともあった。  ここのところ、成長期のあたしはぐんぐん背が伸びているから、バスケ部なんかもいいんじゃないか、とも。  けれどあたしは、誰とも接したくないので、人間関係の濃密そうなクラブはパスだ。
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