走る、光射す方へ

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 私は悪夢を見ていたようで、それでいて幸せな夢から醒めたような複雑な気持ちでベッドに突っ伏した。 「おキサキさま、どうしたの?」  そんなあだ名も、刹那的なものだ。  きっと明日になったら、また独りで暗い日々が待ち受けている。 「……何か、帰った方がよさそう……」 「……そうだね」  ふたりはそそくさと帰る支度をしたようで、そして“ごめんね”と、ちいさく呟いてドアから出て行った。 「うああああああ。うあああああん」  あたしはこの世の終わりかってほどに涙を流した。  あざさえ、このあざさえなければ、幸せに暮らせたのに。  友だちもできるし、恋だってできるかもしれないという淡い期待を持っていた。 「……チャップ!」  ベッドの上にちょこんと乗っているくまのぬいぐるみの足を引っ張った。 「なによ! ばか! ウソツキ! ばかばかばか!」  思いをぶつけ、拳をぶつけていた。  ……完全なる八つ当たりだった。    一晩泣いて、泣きまくって、少し落ち着いた。  友田さんも奏多ちゃんも、みんなも、何も誰も悪くない。  あたしが勝手にコンプレックスを抱えて、卑屈になっていただけだ。  あたしの頬に、この気持ち悪いものがあっても、みんな仲良くしてくれた。  あの優しさは、変な気の遣いようではないと解る。  髪を切ってくれたのも、友だちのしるしの儀式だった。  これからもっと、ずっと仲良くしてくれようとしてたのに、あたしのイメチェンを歓んでくれたのに、あたしったら……。  あたしったら、ばかだ。  チャップでも他の誰のせいでもない、自分自身が悪いのだ。
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