走る、光射す方へ

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 そして、ベッドの中でうつうつとしたまま夜が明けた。  明けない夜はないというけれど、そんなのウソだ。  あたしはこの紫色のあざを抱えている限り、ずっと暗いトンネルの中のままだ。  ――なんて、こんな考えがいけなかったのかな。  ふたりには悪いことしちゃったな。  ……もう、完全に仲良しの道は途絶えた……。  せっかく切りそろえてくれた前髪を、せめてものお詫びにキレイに整えて行こうと、鏡の前に立った。 「……え、あざがない……」  立ち鏡の前に立つと、やはり昨日のようにあたしの頬には何の傷もなかった。  それどころか、光って見える……。  何が夢で何が現実?  少し混乱してしまって、あたしの手から櫛がぽろりと落ちる。  それを拾い、中腰のまま鏡を見ると、そこにまたあざが現れた。 「え、何……?」  鏡を上から下まで思わず眺める。  すると、鏡の上の方はキラキラと光っていた。  ……朝日だ……。  あたしはまた、立ち上がる。  良く見ると、映された頬の部分に窓からの光が反射していて、あざが消えていたように見えたのだ。  春の光に加えて、成長期のあたしは背が伸びていたから、角度と諸々のタイミングで、頬の一部分だけにライトが当てられていたのだ。 「そ、か。ははは……」  あたりは力なくへたり込んでしまう。
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