1人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、ベッドの中でうつうつとしたまま夜が明けた。
明けない夜はないというけれど、そんなのウソだ。
あたしはこの紫色のあざを抱えている限り、ずっと暗いトンネルの中のままだ。
――なんて、こんな考えがいけなかったのかな。
ふたりには悪いことしちゃったな。
……もう、完全に仲良しの道は途絶えた……。
せっかく切りそろえてくれた前髪を、せめてものお詫びにキレイに整えて行こうと、鏡の前に立った。
「……え、あざがない……」
立ち鏡の前に立つと、やはり昨日のようにあたしの頬には何の傷もなかった。
それどころか、光って見える……。
何が夢で何が現実?
少し混乱してしまって、あたしの手から櫛がぽろりと落ちる。
それを拾い、中腰のまま鏡を見ると、そこにまたあざが現れた。
「え、何……?」
鏡を上から下まで思わず眺める。
すると、鏡の上の方はキラキラと光っていた。
……朝日だ……。
あたしはまた、立ち上がる。
良く見ると、映された頬の部分に窓からの光が反射していて、あざが消えていたように見えたのだ。
春の光に加えて、成長期のあたしは背が伸びていたから、角度と諸々のタイミングで、頬の一部分だけにライトが当てられていたのだ。
「そ、か。ははは……」
あたりは力なくへたり込んでしまう。
最初のコメントを投稿しよう!