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やっぱり屈むと、鏡にはしっかりと本当のあたしの顔が映し出される。
だけど、前とは違う。
短くなった前髪のせいで、随分とすっきりした。
前髪のベールで覆われた世界よりも、ずっとマシな気がした。
「は、はは。確かに可愛いじゃん……」
あたしは愛おしむように、自分の頬を撫でた。
「桔咲―!! いつまでダラダラしてるの!! 友田さんたち来たわよ!」
階段の下からママの声がする。
「一緒に学校行こうって!!」
えっ、とあたしは顔を見上げる。
窓の下を見ると、玄関先にふたりの姿があった。
「いま、いく!!」
あたしはドアを駆け出した。
光の方へ、走り出した。
(完)
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