走る、光射す方へ

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『桔咲ちゃん、桔咲ちゃん』  くまのぬいぐるみの、チャップが喋っている。  あたしはびっくりして、思わずチャップのモコモコの手を握りしめる。 『チャップ? あなた話せるの?』 『うん。桔咲ちゃんいつも、暗い顔してるよね。ボク、心配なんだよ』 『だって、楽しいことなんて何にもない……』  チャップの優しい言葉に、思わず涙が出そうになる。 『桔咲ちゃんの願いはなぁに?』 『えと……綺麗な顔になること。誰からも何も言われないように』 『わかった。じゃあ、綺麗にしてあげる』  チャップがあたしのあざのある頬を撫でる。  すーっと胸が晴れて、すーっと涙が出た。 『ああこれで、みんなと仲良くなれる』  
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