走る、光射す方へ

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「あ、あたし、三崎桔咲っていうの。だからミサキでもキサキでも正解」 「えー、面白いね!」 「桔咲って名前可愛いね。おキサキさまって呼ぼうかな」  みんながわっと湧く。  あたしは一気に嬉しくなる。  名前ごときで、こんなに盛り上がるなんて、生まれて初めてだ。 「おキサキさまは、何でそんなに前髪長いの? 昔の映画の、何だっけ」 「貞子」  奏多ちゃんの言葉に、あたしはすかさず答えた。 「そう、それみたい」 「自分でもそう思ってた」  奏多ちゃんは、少し笑ったあと、あたしの髪に手を伸ばし、掻き上げた。  一瞬ビクッとしたけれど、もうあざは消えたのだ。  何も恐れることはない。 「おキサキさま、髪切ったら化けると思うんだけどな」 「あ、ほんと、可愛い顔してるね」 「貞子だから、もう化けて出てる」  あははは、と、また周りが湧き立つ。 「面白いひとなんだね。いつも独りだったから、暗い子だと思ってた」 「そうそう、誰とも話さなかったし、ちょっと怖かった」 「もしかして人見知りだった? 私もそうだよ。新しいクラス、中々慣れなかった」  みんな、優しい……。  それもあたしのあざがないから。  誰も”気持ち悪い“なんて言わない。
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