走る、光射す方へ

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「前髪、切ってあげようか。うち、美容室やってるし、私も美容師志望なんだ」  奏多ちゃんが言ってくれる。 「えっ……切るの?」  今まで髪の毛のベールで包まれた世界にいたから、少し怖くなってしまった。  だけど、もう頬を隠す必要もない。 「じゃあ、お願いしようかな」  そこで、朝の会の始まるベルが鳴った。 「放課後やってあげるよ。おキサキさまの家行ってもいい?」  放課後の、友だちとの約束……。  そんな些細なことが、とても喜ばしかった。 「うん」 「じゃ、お店からハサミ持ってくね」  何だか、光が差して見えた。
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