1人が本棚に入れています
本棚に追加
「随分伸ばしたねー」
そして、放課後。
奏多ちゃんと友田さんと3人で下校した。
お友だちと下校、憧れだった。
ずっと憧れていた。
仲良し同士で帰る他の子たちを、長い髪の毛のベールを通してずっと見ていた。
それが、叶った。
拍子抜けするほど簡単に現実となった。
あざがなければ、あたしだって、こういう時間を過ごすことができたんだ――。
自分の過去を少し呪ったけれど、今は幸せだったから、そんな気持ちも吹き飛んだ。
奏多ちゃんが私の前髪を櫛で梳かして、感心したようにも呆れたようにも言う。
「いつから切ってないか思い出せないよ」
「いい機会だったね。ちょうど春だし」
友田さんがママの出してくれたバニラのカントリーマームを口に頬張りながら言う。
ママってば、私が友だちを連れて帰宅したことに目を丸くし、たくさんの飲み物とお菓子を出してくれた。
チョコ、クッキー、おまんじゅう、おせんべい、そして稲荷寿司まで。
飲み物も色んな種類のペットボトルに、熱い紅茶に、熱い緑茶。
もうちょっとしたパーティみたいだった。
私は広げた新聞紙の上に正座して、奏多ちゃんに向き合っている。
あたし、もっともっと変わることができるのね。
そうして自信が持てたら、いつかは恋……なんてこと、できるかもしれない。
「じゃ、切っていくよー」
「お願いします」
あたしは少し頭を前に傾げた。
「ああ、ちょっと緊張するけど、思い切って」
最初のコメントを投稿しよう!