走る、光射す方へ

9/12

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「あざが……」  頬にある、紫色のあざが、そこに復活していた。  え? どうして? 消えたんじゃなかったの?  思わず手で押さえる。 「どうしたの?」 「大変身だね」  私の様子をよそに、ふたりは喜色満面だった。 「あ……あの……」  私はふたりを見る。 「この、あざ、ずっとあった?」 「え? あったけど」 「いつから? 朝の教室でもあった?」 「あったよ」  平然と応えるふたりに、私は哀しい気持ちでいっぱいになった。 「何で? 何であるの?」  プチパニック状態だ。 「おキサキさま、どうしたの?」 「ずっと黙ってたの?」 「何のこと?」 「あたしの頬にあざがあるって、そのこと、何も言わなかったの?」  ふたりは顔を見合わせて、そしてあたしを見て、戸惑った様子だ。 「だって、ずっと前からあったんでしょ」 「そうだけど! でも今朝は……、今朝は」  鏡で見ても、何もなかったのに。  ようやく呪いから抜け出せたと思ったのに。 「一体どうしたの?」  奏多ちゃんが立ち上がって、あたしに手を差し伸べる。  あたしは思わずそれを、パッと払いのけた。 「どうして髪切っちゃうの!? ずっと隠していたかったのに……!!」  友田さんは飲み食いの手を止め、奏多ちゃんは呆然と立ち尽くす。 「だってその方が可愛いと思ったから」 「実際印象変わったし」 「うああああああん」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加