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自転車(空気入れ)泥棒(12)…実際の話
「どうだい、わたしの感作能力は凄いだろ」という具合にですね。まるでたった1人のリスナー相手に万年DJをやっているような塩梅です。まあ、臭いDJですがね。私などはこれを称して「オッカア男と霊視カカア」と呼び奉っております。はい。この存在は何もこいつらストーカーどもに限ったことではなく、ごく一般のご夫婦においても、奥方が霊視女であるならば普段に行われているようですが、ただこちらの方は至って良識を弁えており、間違っても相手(こんなことは何も知らない独身の男性)の前で「あんたの思っていることや行っていることを知っているよ」などという思わせぶりは(たぶん)しないだろうということです。まあ、これはひとこと御参考までに(世の独身男性の方々の為に)申し述べた次第です。
さてしかし、まあ、こいつら良識もクソもない、チンピラヤクザストーカーどもに於ては「へー、そうかい。あの野郎、そんなこと(例えば本能的なこととか)を思っていやがったのか。ガハハハ」とばかり大声で哄笑いたします。平気の平左ですね。
で、その…本筋に戻りますが、なけなしの金で買った空気入れを取られてすっかりしょげ返ったアントニオが…い、いや、つまりその〝わたくし〟が、501号室の自分の部屋へと戻ってまいります。73という老齢の身ですから5階までの登攀は本当につらいようです。しかしこれを霊視女の注進で素早く知った、彼の真下の部屋の401号に陣取る御一党が算段を巡らします。
ズべ公「おい、みんな、あの野郎が冴えない面(つら)をして階段を上って来るよ。ふふふ。どうお迎えするんだい?」
ばってん「おー、わかった。んじゃ兄弟(きょうでえ)、クソモト。ど派手にコンプレッサーを鳴らしたれや。もっと滅入らせたれ。そしたら野郎、思い余ってケーサツに垂れ込むかも知れねえからよ」
クソモト「オーケー。じゃ(女2人に)いい頃合いを云ってくれ」
ズべ公「あいよ。任せな」
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