消えた同僚

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 三谷さん、年上の男性が好みだったのだろうか。 「何歳くらいの人だって?」 「まぁ、五十はとっくに過ぎてるんじゃないかって話」 「やっぱり、恋人?」  ドキドキしながら問うた。母は、眉を吊り上げたり潜めたりした。 「そこまで分からないでしょ」 「あ、そうか」  そりゃ、同じマンションの住人だからってそこまで、知る訳がないか。三谷さん、何か闇を抱えていたのだろうか。そんな風には見えないのだが。仕事を覚えるため、毎日一所懸命だし、分からないことはちゃんとその度、聞いてくる。言葉の使い方もとても丁寧だった。昔から苦労したから、手に職をつけたかった彼女。昼休みはほとんど喋ることはないけれど、感じが悪い人ではないし、人とコミュニケーションが取れない訳ではない。
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