伊香保温泉事件簿

1/56
181人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ

伊香保温泉事件簿

 クリスマスソングの調べが街中に流れ始めた。百円ショップでも可愛いサンタやトナカイグッズがあふれ出していた。この時期は色彩が失せ、何もかもが灰色に風景が変わる。父の走らせた車は都内のICから、関越自動車道に入った。  東京都内から埼玉県を通り抜け、アッという間に群馬県に入った。ところどころ見える車窓の風景は広々とした畑地へと姿を変えた。少し寂し気な色の蔬菜の葉が見える。それていて住宅が密集していたりする。東京都内とは全く違う風景だった。 「伊香保温泉は山の中だから、もしかしたら雪が降ってるかもしれんなぁ」 「ふーん、そうかぁ。寒いかもね!」  初めて行く場所だから、心は踊る。今日は初めて伊香保温泉へ父と旅行だ。母と医大生の弟、幸太は留守番。父の叔母が仲居をしている宿に二泊することになった。 「琴音は、大輔君とは上手くいってるのか?」
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!