消えた同僚

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「君もやりなさい。ただでさえ、人手不足なんだから」  先生は酒井さんのほうを指さした。何故こんなに落ち着いていられるのだろうか。 「勿論やります! それより先生の出身は長野県でしたよね」  その言葉に先生は体をフリーズさせた。酒井さんや他のスタッフが準備をしながら首を傾げてみている。 「それがどうした?」 「もしかして、三谷さんのお母さんと昔出来てたんじゃないですか?」  私の単刀直入な質問に、皆が瞠目しながらこちらを見る。勝手な私の想像にすぎない。けれども、先生が長野県の中野市で高校生の時まで暮らしていたことは聞いていた。先生は三谷さんに甘いところがあった。溺愛までとは言わないが、少し猫撫で声の時が多々ある。もしや先生は三谷さんに好意を持っているのかと思ったこともある程だった。
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