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「勝手な私の推測ですが、電話越しに聞こえたあの『ふるさと』あれは、三谷さんのお母さんからの暗号だったのではないでしょうか。あの歌は中野市の高野辰之が大正時代に作った歌でした。中野市では代表する童謡になっているみたいですね。三谷さんのお母さんの世代ではなかなか聞く人はいないと思います。あの歌は、荻野先生のことを指していたのではないでしょうか」
先生の目が虚ろになっていく。そしてぼんやりした顔になった。どうやら私の推測は当たっていたのではないだろうか。スタッフ全員が腰を抜かしている。酒井さんは今日は診察どころじゃないといった感じで、本日休業の札を探していた。それを慌ててクリニックの玄関の表へ持っていこうとする。その時「あらっ」と、頓狂な声を上げた。
「失礼しますよ」
母の声が聞こえる。どうやらこちらへ向かってきた。
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