消えた同僚

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「琴音、勝手なことするんじゃないって言ったでしょ」  娘を心配した母が職場へやってきた。母は先生のほうを見た。 「こちらのクリニックのHPを拝見致しました。先生は中野市出身のことが記載されていましたね。娘から『童謡』のことを聞き、私もまさか。と思いました。娘のどこに隠してるかって推測は証拠もないのに、大変失礼ですよね? 失礼致しました」  母は律義に一礼したが、頭を上げて話を続けた。確かにこれは私も悪い。隣で一緒に頭を下げる。 「しかし、絵美さんがどちらへいるのか知っているのではないでしょうか?」  母は柔和な口調で訊き返した。 「どこにいらっしゃいますか? お宅のおうちですか?」  先生は顔色を変えない。流石に家ということはないだろう。奥さんがいるのだから。そんな時、クリニックの入り口からまた音が聞こえた。
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