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今日も犬に対する扱いは容赦ない。
容赦ないというか、人間と思っていない。
「おい、お前昼飯買ってこいよ」
「掃除やっといて」
「先生、学級委員はこいつにしましょう」
犬に任せるには重すぎると思う任務を、こいつらは平気で背負わせてくる。
いっそのことロバを名乗った方がマシだろうか?
いや、こいつらは俺を卑下し、無駄だと思っているから、やはり犬が適当だろう。
先生も何も言わない。家に帰ってもきちんとした時間に普通の食事が出てくるだけ。世の中にはもっとひどい環境の人もいるって分かっている。けど、家畜のように無駄に人に使われながら、かと言ってなすべきこともよく為さず、ただ飯を食って生きるこの人生にうんざりする。
あいつらこそ騒がしい犬な気がするが、反抗せずに従って、のうのうと生きている自分とリードを握っているあいつらのどちらが人間らしいかなんて、反吐が出そうな禅問答だ。
いっそのこと、人間ではなく犬になれたら良かったのかもしれない。そうすれば、部をわきまえて、人間らしさに悩む必要もなかったのかもしれない。
道をハッハッハッと嬉しそうな息を出して、自由への悦びを噛み締めるような顔をして、リードに首を繋がれて歩く犬を見て考える。
犬だったら…
その時、何かが起こった。
何が起こったのかは分からない。
ただ、けたたましいクラクションの音だけが、耳に残った。
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