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第8章 「第二次禁門の変~前編~」
明倫館高校にて。
試衛館高校元生徒会長の天野孝明が、ついに発狂をやめ、部屋から出てきた。
桂孝允と西郷高森が、平伏して出迎える。
「陛下、明倫館の全兵士、出陣準備整いました!」
「同じく、いつでも出兵可能でごわすよ。」
帝は、強ばった表情のまま二人を一瞥した後、関白・九条直只の方を見る。
関白は静かに頷く。
帝は覚悟を決め、宣言した。
「これより、朕らは京に攻めのぼる。試衛館を取り戻すぞ‼」
例の幽霊騒動から一週間後。私達は特段変わることなく、江戸幕府再興会の部屋で過ごしていた。
━━正直抜けたい、が、将軍がそれを許さない。
そんな将軍と老中は、時々試衛館に赴いているため、いない日もあるんだけど・・・・・・
(二年生の旗本達は、全員ちゃんとまともな人達なので、苦労はしない。)
そんな、不本意ながらもいつもと変わらぬ日々を送っていたのだが。
突如、目付の鳥居妖像先輩が、声をあげた。
「上様!試衛館・松平殿より救援要請です!」
・・・・・・え?
慶保さんが?
将軍がすぐさま反応する。
「続けろ!」
「御意‼松平殿の電子書状を読み上げます。
━━━━━━某、薩摩・長州の攻め受け、戦有様に入り候。薩摩・長州の平数は共に一万宛ずつ、こなたは兵力の足らぬ間、籠城戦に移行し候。げに恐れながら、早急なる救援を求め候。━━━━━━
以上です‼」
いやなんで古文なの?
ともかく、状況が切迫しているのは伝わってきた。
将軍が立ち上がる。
・・・・・・嫌な予感がする。
「試衛館に向うぞ!旗本5名は、ここに残れ。こちらの留守を狙われてはかなんからな。
現場には、私、老中、近藤、土方、沖田、明智の6名で向かう。」
やっぱり!そう言うと思ったッ‼
私はすぐさま反応する。
「しかしッ!こちらは6名、対して相手の兵力は合計2万。私達が行ったところで焼け石に水では⁉」
しかし将軍は、ニヤリと笑い、秀光さんの方を見る。
「秀光、問題ないな?」
「ええ。対処可能な範囲です。」
は⁉
マジで言ってるの⁉
この人何者なんだよ・・・・・・
将軍が続ける。
「沖田、君も秀光の援護をしてやれ。」
「よろしくお願いしますね(圧)」
秀光さんの笑顔が怖い。
あの掃除君が、ぶるぶる震えている。
・・・・・・マジで何されたんだよ。
「そして、残りの、私、老中、近藤、土方は、敵の本陣に突入する!」
頭湧いてんのかコイツ。
呆れて言葉が出ない私の肩に、才蔵が手を置く。
「まあ、いつものことだ。こうなったコイツは、もう誰止められんだろ。さっさと行って、終わらせようぜ。」
「・・・・・・まあ、そうだね。」
私も、説得を諦める。
「上さまに、何たるご無礼‼」
相変わらず、老中が煩い。
将軍が、目を暗く輝かせる。
「今回の戦、明倫館と造士館の背後には、かならずヤツ━━帝がいる。前回は逃走を認めたが、今回はもう許さん。今度こそ私が、ヤツの首を斬る。
━━各員戦闘準備を‼」
将軍のこの言葉で、その場にいた全員に緊張が走った。
島津先生が、すぐさま車を回す。(この人、いつも運転係なのね。)
窓から顔を出した先生は、将軍に苦言を呈す。
「まったく・・・・・・後に禍根残すことをしやがって。
いいか、俺はお前の行動を止めはしないが、絶対に無茶だけはするんじゃないぞ。」
すでに、敵兵2万に6名で突入するのだから、相当無茶なのだが。
将軍は快活に答える。
「もちろん、島津殿にご心配はお掛けしませぬよ。」
「・・・・・・ったく。おら、さっさと乗れ‼」
私達が車に乗り込む。
全員が乗ったのを確認すると、先生は突然車を急発進、一気に加速する。
ちょ、スピードスピード‼
将軍は肩を竦める。
「まったくこの人は・・・・・・口ではああ言いながらも、いつも私達のことを気にかけてくださる。」
だったら今すぐ昌平坂に引き返してほしい。
2時間後。
爆速で車が進行したことになり、早くも試衛館の麓まで辿りついていた。
尚。
東京から京都までは、約450kmある。
それを二時間で走りきったということは・・・・・・時速225km⁉
まったく、危険運転なんてもんではない。
なお、数十年後、とある猫カフェの主人は、時速3000kmで進撃したらしいが、それはまた別の話である。(私は何を言っているんだ?)
さて、敵二万の兵を相手取る、秀光さんと掃除くんが車を降りる。
将軍が激励する。
「それでは秀光、よろしく頼むぞ。」
「ええ、上様の御心のままに。沖田殿も、援護お願いしますね━━━まあ、万が一にも私が敵を取り逃がした場合、の話ですけど。」
秀光さんの言葉に、掃除くんが身震いする。
・・・・・・ほんとにどれだけ怖い思いしたんだよ。
二人を降ろすと、また車はその場を走り去る。
試衛館を取り囲むように迫る長州と薩摩2万の兵。その正面に、明智と沖田が降り立つ。
さすがに急な舞い降り方だったからか、沖田はやや気分が悪そうな顔をしている。しかし、明智は何も気にしない。
「誰だお前ら‼」
「ここをどこと心得ての狼藉か!」
最前線の兵達から、罵声が浴びせられる。
その言葉に沖田は憤慨する。
狼藉はむしろお前達だろ!と。
一方、明智は何もなかったかのように聞き流し、刀を構える。
「さて沖田殿、準備はいいですか?
━━まあ、この小説の展開上我々の敗北はあり得ませんので。気楽にいきましょう。」
とんでもないメタ発言に、沖田は身震いをする。
バカにされたと勘違いした敵兵達が、ついに軍配をあげた。
「皆の者、かかれーーー‼」
全兵が、二人に向って迫る。
それを見た明智が━━ニヤリと笑った。
【時は今 雨が下しる 五月哉】
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