水色の心

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乱雑に置かれた物で溢れかえった部屋で、体の内側から響く心音を止める為にベットの上で踞る。 心の中ではずっと自分を責める声が聴こえていた。 『お前が怪我すれば良かったのに。』うるさい、 『お前があの時ミスをしたから、気付いた大先生が死にかけた。』うるさい… 『お前はもうここには居られない。』分かってる… 『俺は必要ないだろ。』分かってんだよッ!!! 本当は、乱暴にあいつらが手を引いて「そんな事気にすんな!」と笑ってくれたら。…きっとぽっかりと覗くこの空白も全て、全てどうでも良くなって!!!…どうでも良くなって、… 「これが、(正体)?」 誰にも聞こえない程小さく呟かれたそれは、俺の心に深く沈み込んでいった。 どうしても表情を偽り、切って貼り付けたような笑顔を浮かべてしまう。初めて会ってその笑顔を見抜いたのは、いつも鬱々とした相棒だけだった。 「どしたん、苦しそうやん。」そう声をかけてくれただけで、どれ程救われただろうか。深海の様な瞳が開けられるのはいつになるだろうか。 おばあちゃんやあいつらから注がれた温もりを、まるで病人への投薬の様に思えてしまって。苦しくなりながらも、依存してしまっている気がする。 「お前に任せたいんだゾ!」俺を必要として、信頼してくれたあの声がどれだけ甘かっただろうか。最後に聞いたあの声は重く苦く脳を揺らした。 どうすることもできない今、硬いベットの上で何本目かの煙草を吸う…そろそろやめなければ怒られるだろうか? いや、今の彼はそんな事気にしている場合ではないだろうが。 …解剖の出来ない手術台で、答えなど出るのだろうか… 自分には分かりやしない、と部屋に充満した紫煙に軽く咽せた。 煙草の火を消し、これからどうなるのだろうかと深く考え込んでいた。 ふと、軍事学校に進学して以来、一度身会っていない両親というモノを思い出した。 幼い頃は自分を見て欲しくて必死で勉強をしたものだ。学年一位を取った俺に父親はそうか、としか答えてはくれなかったが… 全部無駄だったなぁ、と思いはするが…そのおかげで今があると自分を渋々納得させる。 結局誰も俺を愛さない、愛してはくれないと 体から出ていった水分を補う為にコップを取って、そういった感情を無理やり流し込む様に水を飲んだ。 おぇ、と苦しさに呻いて鏡に映る自分の顔に手を伸ばした。 …たとえ有名な科学者でも、数式などでは一切証明出来ないだろう。『感情を捨てろ。』今まで散々言ってきた言葉を自分に言い聞かせた。 きっとこの“心”という名前の、誰にも分からないこの不可解を。 「素直になれない、俺を___」 がちゃりと音がして、扉が開いた。 「相棒、」 お前は、見抜いてくれよ。
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