やんごとなき事情故。

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 数多ある世界のひとつ。其処は、地獄と呼ばれる黄泉の世界のお話。  多くの世界は、天と地が創られ、上と下に別れて居るだろう。天とは即ち、世界の創造神が存在する聖なる領域。地とは、天より修行の旅へと出された形ある魂が個々に器を用いて、多くの修行を重ね魂の質を磨く世界。此処では、そんな様々な世界を六道輪廻にて繰り返す。  そして、其の最下に存在するのが地獄と称され、天と連携し魂を受け入れる機関もある。地でありながら、此処にも神が存在して居た。其れは、十存在する十王(ジュウオウ)。他、閻羅王(エンラオウ)とも呼ばれる。其の主な職務は、器を失くし天へ向かう魂の質を見極め、天へ向かえるか、地の更に底にて罰を受け魂を清めるかを裁判する。  さて。此の地獄で暮らす鬼と言う種族。彼等の職務とは主に、地獄にて罰を受ける対象とされた魂達の監督、管理、そして刑の執行等幅広く担当。鬼の肉体は、最も力が充実した年で成長が止まる。力の衰えや寿命が近付けど、肉体の見目は若々しいままなのだ。因みに、其の寿命も当然人の非では無い程長い。そして、個体に差はあれど通常で強い力を持つ存在でもある。更に、性の別無く子を授かる事が可能。其れは、男の性を持つ者のみ多く誕生すると言う事情があり、故同性愛の比率も高い。そして何より、地獄に於いて無くてはならぬ存在。地獄とは、大罪を犯した多くの魂の刑場。日々大忙し、手不足は決して招いてはならないと言う理に由来する。  そんな鬼達の中で、超と付く程の特権階級一族が存在する。其れこそが、十の閻羅王の側を代々許される補佐官の一族達。今回の御家事情は五道天輪王(ゴドウテンリンオウ)に従う、上級鬼族(きぞく)の中でも現在一等の御家柄とされる鬼沙羅魏(キサラギ)家に起きた或問題からであった。
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