異変 いへん

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 寝坊気味だった桜達が、ストライキの如く一斉に、それも咲いてからまだ間もないというのにあっという間に散り、それはそれで不思議なものであったと感慨を抱いた次の日。 もうテストも近いころだった。  当たり前のように倦怠な日々は過ぎ、結局何もかもが普通に流れていく。 俺はそんな何でもない日常が大嫌いだが、わざわざ見つからないもの、例えば俺以外の超能力者なんかを探す、なんてのも面倒なので、何もせずただ漠然と、教師どもが「有意義な学園生活をうんたらかんたら」とか言うその貴重かどうかなんて無くしてから気付くような、本当はどうでもいいはずの時間を浪費していた。  だが、変化が全くないわけでもない。 水は流れる限り常に形を変えるものだと昔の人が言っていた気もするし。 とにかく、変化といえば、最近は柳香がめっきり話し掛けて来なくなった気がする。 前にも一度こんなことがあったように記憶しているが、きっと今回もロクでもないことに夢中なんだろう。 次に会話するときはきっと宇宙人の地下基地云々、異世界への入り口云々と、もう今からでも最後に「だが、挑戦は続く」の台詞が出てくるのが目に見えていることを、さも得意げに俺に語るのであろう。 討論できるのを楽しみにしてるよ柳香。  そんなふうにどうでもいいことを、少しは楽しくならないかというこれまたどうでもいいことによって頭の中でかき回していたのだが、どうもこの思考に味気がないと感じる。 俺のわずかな元気がとうとう完全に切れてしまったせいだろう。  俺は次の授業に出る元気ももちろん無かったので、屋上で風でも浴びに行こうとしていた。 ついでに「元気が落ちていないか探そう」と馬鹿な冗談を独りで展開して、ため息。 まわりからはトボトボ寂しく歩いているように受け取れる態度で屋上を目指し、階段を上っていた。  すると、上から柳香が慌ただしく下りて来た。 最近の柳香は何かに追われるかのように切羽詰まった表情で忙しそうにしている。 そして今日も走っていた。 実に柳香らしくない。 まぁテスト前で忙しいのはわかるが、階段を走るのは危ないだろ…。 と思った矢先に上から落ちてきた。 おいおい、とんだサプライズだな。
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