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宙を舞うノート、プリント、ペンケースとその中身達、文字を読むのも苦労しそうな難しい字が表紙に書かれたハードブックの本。
まるで鳥の翼のようだ。
「ぁ……」
本人も落ちている事に唖然。
ほれ見たことか。
じゃない!
ここは助けるべきじゃないか!
余計な事を考えていたせいで受けとめに行く余裕はあまり無かった……しかし、幼友達として絶対見殺しにはできない。
柳香はあまりに勢い良く躓いたらしく、驚くほど前に飛び出していた。
階段を転がらなかったのが幸いだろう。
俺は飛び出す───が、このままでは一歩間に合わない。じゃあ風を起こせば───。
そう思って念じる。
本当によく機転が利いたものだった。
それと、こういう時ほど偶然は良く起こる。
今日の能力は絶好調だった。
柳香のばらまいた紙切れたちは、地面と接触することなくもう一度空中に巻き上げられ、拡散。
柳香自身は空中で僅かに減速、そのまま落ちてくる。
俺はそこに足から滑り込んで受けとめた。
超ファインセーブだった。
B5の紙吹雪が舞う中、俺の上に柳香がクロスして乗っかっているという異様な光景が広がっていた。
今この瞬間にこの場にいたのが俺ら二人だけで助かった。
もし第三者がこの現場にいたら俺は自殺ものだ。
「大丈夫か?」
柳香を起こし、自分の埃を払いつつ声をかけた。
「…………」
無言で立ち上がった柳香はぽかんとして、まだ何が起こったのかまだ理解出来ていないようだった。
俺はその隙にそそくさとその場を離れようとした。
柳香は不思議に思えばなんでも疑ってかかるクセがあるから、もし、今ので超能力どうこうと言われると困るからだ。
が、案の定柳香に腕を掴まれて止められてしまった。
くそっ……。
『全力で逃がせ!』
目で訴えかける。
なんか発動したりしてはくれないか?!
「待って」
俺の眼力の効果なのか、柳香は俺を呼び止めながらも、その声はひどく抑えられたものだった。
「へ?」
俺はおとなしい柳香に唖然とした。
どうしたいつもの覇気は?
魔王柳香よ!お前はそんなものなのか?
俺の心の中で感情的な叫びが谺する。
現実の俺は時間が止まったように完全に固まっていた。
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