異常 いじょう

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 柳香が早退した日の晩だった……。 「こんな時間に何だ」  柳香からの電話だった、もうとっくに十二時をすぎている。 『うん……まぁ……ちょっとね……話、見てもらいたいものがあるのよ……。……いいわ、今から駅前の公園まで来なさい』  いつも変だが今日は何だか特別様子がおかしい……。 昼間の柳香とはまた違った様子だ。 「何故今からなんだ」 『いいから来て!』  ただならぬ違和感を感じたが、昼間のこともある。 俺だって心配だった。 仕方ないので行ってやる事にする。 しかし今日は忙しいな……。  柳香の言う駅前の公園とは、自転車を走らせて二十分くらいの所にある運動公園である。 ちなみに言うが俺は中三だぞ、十二時過ぎに外をウロウロするという事がどういう事かなど、言わなくてもわかるだろう。 とはいえ、一刻を争う状況である。 とりあえず自転車に乗った。  警官に見つからないかとちょっとドキドキしながらも何とか公園についたワケだが……、 「妙に静かだな……」  ……夜中だから当たり前か。  俺は全く柳香を疑っていなかった。 ただ切羽詰まった柳香が俺に相談を持ちかけてきたのだと思っていた。 疑うべきだった。 そう、そしてこの時さっさと帰っておけばよかったのだ。 いや、始めから来なければよかったと後悔したのは相当後の事だった……。  公園の広場に柳香がいた。 「こんな時間に何だよ」  柳香は返事をしない。  寝ているのか? 立ったまま寝るなんて器用な奴だな……おい。  一人で微笑する俺。  そんな事を考えたりしながら近づこうとすると、柳香がゆっくりこっちに歩いてくる、と次の瞬間───  ひゅうっ  一瞬柳香の手がブレた。 と思ったら、その手は横向きの握り拳の状態で突如飛び出す。 柳香が中三の女子とは思えない程の速さでこちらに謎の鉄拳をとばしたのだった。 しかし、反応できないスピードでもないのは確かだ。 間髪入れずに受けとめにかかる。 ズウッと音がして柳香の拳は俺の手の中に納まった。 受けとめれたものの、明らかに人体の構造と力学をほぼ無視した一撃だ、いきなりトップスピードから入ってくる。
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