回想 かいそう

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   ふう……。 心の中だけで一つため息を吐いた。 心の中だけなのは、ため息は幸せが逃げると聞いたからじゃないぞ。 「今日はホントよく晴れてるよな……」  運動場に向かって独り言を小さく、本当に小さく呟く俺。  あの日もそうだったっけなぁ。あの日初めて特別な自分に気付いたんだったよな……。  十一歳の頃だった……その頃家は山にあり、毎日徒歩で山道を移動のみにわざわざ四十五分も費やし登下校をしていた。 まぁ山道、それはそれで悪くはなかったがな。  そんな中、毎日空を見ながら歩いていて、ふと思った。 (風って吹かせる事出来るのかな?)  などと、夢みたいな事をチラッと思った。 そして軽く念じてみた。 何となく、風が吹けばいい。 と。  俺もまだまだ子供だった。 純粋に超能力は存在していると理由もなく信じていた。 皆も小さな頃は迷いなくそういう事を試しただろうと思う。 普通はそれで不可能だと知り、諦めがつくのだ。 俺もその日を堺にそんな事は考えなくなった。 もう超能力があるのかなんて考える必要がなくなった。 だが、それは普通の結果から導きだされた答えとは違った。 どういうことか?……冗談のつもりでやったものが現実になったんだよ。  風が吹いたのだ。とても冷たくて強い風…。 目の前に広がる田んぼの稲をさらさらと揺らし、風は走り抜けて行った。 しばしの沈黙、そして、 「……偶然……偶然」  つい、あまりの驚きに苦笑と共に独り言がもれてしまった。 そりゃそうだろう。 ありえないはずの事だ。 偶然以外考えられない。 そんなことありえない。
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