私のリベンジ

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私のリベンジ

 キーンコーンカーンコーン。 うるさいチャイムの音。 先生がぱたんと本を閉じる。 「今日の授業はここまで」 そう言って号令をかけて、みんな話し始める。 けれど、私には話す相手がいなかった。 ただ一人を除いて。 「ねぇ、きりか! 新作のスイーツ出たんだって! 放課後食べいこうよ!」 彼女の名前は穂名崎 千代(ほなさき ちよ)。 どうしてか、一人ぼっちの私によく話しかけてくる変な子だ。 「……いいけど、私金欠だよ」 「えー、じゃあまた今度かぁ……」 すると。 「……はぁ、見てるのかったるいんだけど ねぇ、そこのあんた」  一軍女子の勝俣 優樹菜(かつまた ゆきな)は私の方へと足を運んできた。 「地味でメガネでクソブスのくせに何、人様と仲良くしてんのよ」 パン!! 大きく響いたそれは、私が手で叩かれた音を意味していた。 教室はまたか、という感じだった。 そう、私はいじめを受けている。 彼女によって。 「大丈夫!? と、とりあえず保健室……」 駆け寄ってきた千代に、私は頬を抑えながら声をかけた。 「大丈夫 ……大丈夫だから」 その日は普通に授業を受けた。  家に帰ってみてみたら、頬が酷く腫れていた。 どうしようもないな、これ。 「あぁ、あんた 帰ってきてたの」 母も毒親と言っていいほどの人だった。 「今日はそうね、五千円渡しとくから これでなんか食べて頂戴」 金だけ渡して、自分は知らない男といちゃついてくる。 一週間帰ってこないときもあった。 次はいつ返ってくるだろうか。 「じゃ、あたしは行くから」 がちゃんとしまった扉。 私は座った目で五千円札を見つめた。  その後もいじめは続いた。 持久走で足を引っ掛けられたり。 靴を片方隠されたり。 靴の中に画鋲が入っていたり。 栞をずたずたに切り裂かれたり。 陰湿なものが多かった。 私は思い切って先生に相談することにした。 「それはお前と仲良くなりたいけど、なり方がわからないんじゃないか?」 「……そうじゃないと思いますけど」 「とにかく、先生はテストの採点で忙しいから また今度な?」  相手にしてもらえるはずがなかった。 そんな中、唯一の支えが。 「きーりかっ! 今日も一緒に帰ろ?」 千代だけだった。  他愛もない会話をしているとき、私の目が座っていたのか、千代は気を利かせて話を変えた。 「……いじめ、うけてるのわかってるよ」 「えっ……?」 「見て見ぬふりしてごめん でも、私だって巻き込まれたくないんだ」 「……そう、だよね、うん」 「でも、わたしたちはずっと友達だから」 「……うん、ありがと」 その言葉が、嬉しかった。 救われた気がした。 ……なのに。 『東京都南北高等学校にて、女性生徒の遺体が発見されました 警察の調べによりますと、遺体の身元はこの学校に通う穂名崎千代さんの遺体だとわかり……』 「……え?」 ニュースで見た。 彼女は、千代は死んでしまった。 「友達だから」 そう言って。 もしかしたら彼女も私と同じようにいじめられていたのか? だとしたら、だとしたらっ……。 ……私は、どうすればいい?  気づけば学校の屋上にいた。 普段は封鎖されているけれど、今日は空いていたから。 風が気持ちいい。 夕日が赤く、私をスポットライトのように照らす。 「……さよなら」 誰も味方がいなくなった世界なんて。 私には、いらないから。  目が覚めると白い空間にいた。 何もない、白だけの世界。 「……ここ、どこ?」 天国? それとも地獄か? わからないまま私は立ち上がる。 と、そこへ一人のスーツを着た男性がやってきた。 「ようこそいらっしゃいました」 ペコリとスーツの人は挨拶をした。 「あの、ここって……」 「ここは未練がある方が来る場所でございます」 「未練ってことは……」 「はい、あなたは死んでおりますよ 屋上から飛び降りて」 あぁ、やっぱりあれは夢じゃなかったんだ。 「……でも、私未練なんてないです」 「あるじゃないですか 『復讐したい』という未練が」 「あっ……」  今までたくさんの仕打ちを受けてきた。 陰湿ないじめ、味方にならない教師、男遊びだらけの母。 そしてそんな奴らに殺された親友。 「……許せないですか?」 数秒沈黙したあと、私は答えた。 「……はい」 「では参りましょう! 貴方様の復讐劇の始まりです! さぁ、輪廻転生をしてやりかえしてやるんです!」  私は輪廻転生することを決めた。 これが、私の復讐劇(リベンジ)だ。
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