出会い

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もうすぐ家につくというところで、俺とリコは思わぬアクシデントに見舞われた。 酔った男に絡まれたのだ。 スーツ姿の40代くらいの男だ。仕事はどうしたのだろう。まだ17時になったくらいの時間だ。会社勤めだとしたら、酔うには早い時間じゃないのか。色々と疑問は湧くが、とりあえずピンチなのである。 「こんな時間に1人で歩いてたら危ないよ、おじさんが送ってあげるよ」 薄暗くなっているとはいえ、すぐそこに家があるのに、送ってあげるも何もないだろう。 この男と一緒に居る方が危険な気がする。 「いえ、大丈夫です」 か細い声でリコが答えた。酔っ払いにはよく聞こえなかったようで、「なになにー?」なんてひょうきんな声で聞き返している。リコは恐怖で足がすくんでいるのだろう、その場から動くことができない。 「大丈夫だと言ってるだろう。関わるな」 俺が威嚇して強めに言ってやるが、酔って上機嫌な男には何も響いていないようだ。 「お、喋る猫ちゃんだー。俺、猫好きなんだよねぇ」 赤ら顔で、へらへらとしている。まっすぐ立っていられないのか、動きもくねくねして気持ち悪い。 こんな男、ひっかいてやろうかと思ったが、傷がついて賠償金なんて話になったら、山代家に申し訳ない。 俺が男の顔めがけてとびかかってる間に、リコに逃げてもらうか。それだったら怪我はしないはずだ。 そんなことを考えていると、俺を抱きしめるリコの腕に力が入った。これでは俺は動けない。 商店街から少し離れると閑静な住宅街になっているが、山代家周辺は人通りが多くない。マンションではなく一軒家が並んでいるので、それほど住人の数がいないのだ。誰か人が通り過ぎるのを待つのは現実的ではない気がする。 俺が助けを呼ぶことはできるが、その間にリコをひとりにするのは危険だ。 どうしたものか。
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