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それぞれ四人の告白には、続きがある。という物だった。
「まず最初の告白者、国府田さま。あなたが戦地へ趣いたのは、射撃訓練もままならない頃でしたね。射殺した相手は埋葬したと」
「ああ、そうだ」
「あなたが射殺したと思っていらっしゃるかたですが、実は生きています」
「なんだと?」
「撃ちどころが急所を外れ、気を失っている間に埋められた。あまりにも急いで埋めたので土がまだ柔らかいままだった。だから自力で抜け出したと仰っていました」
「それなら私の事を探しているだろう」
「ええ、探しておられます。お陰で戦争で死なずに家族と再開出来たと。あなたにお礼がしたいそうです」
「私に礼などしなくていいのに」
「さて、続いては藤村さんの告白。十一時頃は信号機が点灯しない事があり、あなたはブレーキとアクセルを踏み違えたという事と、もう一つわかった事があります」
「それは、なんだ」藤村は主催者に問う。
「あなたが運転していた車は、製品に欠陥があった事を、メーカーが認めています。特にブレーキの部品。状況から鑑みて、リコールしなかったメーカーにも落ち度があったようです」
「それ、本当か?」
「ええ、誰が運転しても、事故に遭っていましたが、運がいいことにひいてしまった相手は入院で済んでいるそうです」
「じゃあ、そいつ怒ってるんじゃ」
「怒ってます。自動車のメーカーに。あなたにも謝罪するチャンスはあります」
「そうか、謝罪しないとな」
「続いては花村さまですね」
花村の殺人の罪は、中絶については苦渋の選択の末であり、子供の事を考えた結果。シングルマザーとして子育てをすればいつか虐待してしまわないかと思うと、出産を諦めた背景から審議しないとして、父親はもう充分苦しんだので、これ以上苦しませたくないと父親の兄妹も話していたので花村は悪くないとのこと。加えて支援してあげられなかったのは申し訳ないとのことだった。
「最後の菰田さま。こちらは、利用者のかたよりお言葉を頂いてます」
菰田は施設の同僚から見れば、仕事が出来るほうではないが、素直で、誰に対しても優しく、丁寧に対応しつつ一生懸命に仕事している職員だというのは、利用者の家族も理解してくれていた。本来なら業務上過失致死傷罪で訴えるところかもしれないが、菰田の人柄に免じて、許す事にしたという言葉だった。
「ありがとうございますっ!」
利用者の家族からの言葉に、少し自責の念から開放され、菰田は涙を流す。
「昨今は介護職員が利用者を殺害するニュースがありますが、殺そうとして殺すのと、救おうとしても救えなかったのは大きな違いがありますから日頃の行いに救われましたね、菰田さん」
「介護職、向いてないと、ずっと思ってた」
「あなたは介護に充分向いてますよ。これで私の告白は終わります。では皆さん、直接思ってる事を伝えてみましょう」
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