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翌日、当たり前だがお昼の時間はやって来る。
二限の授業が少し長引いたせいで、いつもの目立たない場所にあるベンチには先客がいた。
暗い気持ちで、通路際のベンチに空きを見つけた。
座ってふうっと下を向く。
わたしは、スマホをいじった。毎度のこと、広告しかメッセージは来ていない。でも、いじっているフリをする。
並木道になっている通路には、授業を終えて移動する学生で溢れている。
賑やかに飛び交う声。
ぎゅうっと締め付けられるお腹。
お腹は空かないけれど、コンビニおにぎりの袋を開封した。
刹那、またしても隣に気配を感じた。
案の定、隣には昨日の青年が座っていた。
距離感は昨日と一緒。
同じベンチの端っこ同士にわたしたちは座っている。
何食わぬ顔の青年は、通路を行き来する学生たちを眺めているようだった。
いったいどういうつもりでわたしの隣に座るのか、見当もつかない。
まさか、わたし、見初められた?
いや、ないないと、ひとり首を振る。
今日は箒は持っていなかった。けれど、服装は昨日と一緒。
「今日はほうじ茶ですか」
話しかけられた、と横を見ると、彼は昨日と同じように、わたしがベンチに置いたペットボトルのお茶を見つめていた。
「は、はい……」
「ほう」
落ち着いた話方をする人だ。
ゆったりとした自分の空気感を持っている人。
わたしが焦っているとか、とまどっているとか、あんまり気にしていないように見える。
そして、会話に困ったからお茶の話をしてくる、というわけではなく、本当にお茶に関心があるように感じた。
彼は、それ以上話しかけてくることなく、ただそこに座っていた。
それでいいのだと分かると、わたしは安心しておにぎりにパクつくことができた。
彼のことは謎だけど、わたしがここに座っていることに関しては、少なくとも迷惑ではなさそうだから。
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