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しばらくすると襖をノックする音が聞こえた。
明智が母親から飲み物とお茶菓子をお盆ごと受け取って、ちゃぶ台の上に乗せる。
母親はニコニコと優しい笑みを向け、小さく手を振り「ごゆっくり」と言って階段を下りて行った。
「明智の母ちゃん、普通だよな。転生者とは思えないよ」
もらったお茶に息を吹きかけながら、俺は言った。
ここでコーラじゃなく緑茶が出てくるのは、期待通りで安心する。
「郷に入っては郷に従え。そう思って髪型も服装も変えたんだ。妹も見た目は現代人さ」
――おい、明智。なぜお前だけ従わなかった。
「俺もここに来て、髪型の書物は読んだんだ」
「ヘアカタログな」
「でも、あれらの髪型にする勇気がなくて……諦めた」
「……そうか」
――俺は、ちょんまげにする勇気がないよ。
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