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「私はまあ、来栖君はそのうち受験資格を失くすと思ってるんですよ」
湯呑を傾けながら、高村はひとりごとのようにつぶやいた。新しい受験者の名前を入力していた各務が顔を上げる。
「なぜ?」
「彼は弟君が心配だから現世に戻りたいと何度も訴えてますけど、心の奥底で弟君のことを信じてますから」
「未練が無くなるということですか」
「そういうことです。ですから、彼の心の整理がつくまで何度でも落としてあげましょう」
「やはり、人間のことは人間に聞くのが一番ですね、篁さん」
「私がここまではっきり断言できるのは、あなたが彼の本質を映して見せてくれるからですよ」
「それが浄玻璃の鏡の化身である、私の役割ですから」
「受験者数が溜まりましたね。それじゃあ、来栖君を呼びましょう」
高村はマイクの前に座り、楽し気に鉄琴を鳴らした。
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