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「タカムラさん、いい加減にしてください。我々の仕事は」 「誰に対しても公平に行われるべき、ですよね」  自分に助け舟を出してくれた女の言葉を引っ掴み、来栖は続きを高村に投げつけた。  高村は来栖が何を言っても簡単に(かわ)してしまう。だったら、高村の頭が上がらない相手の言葉を借りてしまえばいい。  ぽかんとした高村の表情に、来栖は手ごたえを感じた。が、高村はゆっくりと腰を屈めると、口元に手を添えて今までで一番腹の立つ笑顔を浮かべた。 「なになに、来栖君ってばガミっちのこと好きなの? 口癖を一言一句間違えずに覚えてるなんて相当じゃありません?」 「はぁ⁉ どうしてそういう話になるんだよ。俺のことはともかく、そういう話の持って行き方は各務さんに対して失礼だ! 人を巻き込むな!」  来栖はいつになく荒々しい調子で高村に反論した。 「やれやれ。そんな性格だから来栖君は合格できないんですよ」 「……残念ですが、試験に関してはそう言わざるを得ませんね。この試験に受かるには、来栖さんの性格はまとも過ぎる」 「そんなぁ」  庇った相手から追撃をされ、来栖はがっくりとうなだれた。  彼女がルールを順守する性格をしていることを思えば当然の行動ではあるが、少しくらいは味方してくれるのではないかと期待していた。  ずいぶん長い付き合いになるっていうのに、相変わらず厳しい……。でもまあ、に情なんてものが存在していたら、世の中の秩序が保たれなくなるから仕方ない。  来栖は各務から手渡された不合格通知を乱暴にジーンズのポケットに捩じ込んだ。
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