闇を照らすともしび

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闇を照らすともしび

 迷宮の奥深く、泰史が「儀式の間」と称した一室。  (はり)に通された紐で雫の両腕が吊るされていた。  立ち姿で拘束されたかつての(あるじ)の姿を、陰陽師は忌々しそうに眺めた。 『あの娘は裏切りの象徴であった。憎き家臣の血、そして貴女の血も引いたあの娘……』  泰史は自分が犯した桜木詩音を思い出していた。 『家臣の子を(はら)んだことは仕方無きこと。しかし何故それを恨みに思わない? 望まぬ子をその腹に植え付けられて、何故きゃつらの(さち)を祈れるのじゃ?』 「それが私の……平家の姫の役割だと思ったからです。血を後世へ残すことが……」 『されど穢れた者の血だ! あのような外道どもの子孫が繫栄する世の中など……!』  激昂しかけた泰史であったが、呼吸を整えて彼は平静を保った。少し口調を柔らかくもした。 『……我らが死した後も、貴女はつらい想いをされたのだろう』  長い指先で泰史は雫の頬を撫ぜた。 『だからこそ、我らの手を取って頂きたい。復讐の女神として』 「それは出来ません」  パンッ。  即答した雫の頬を泰史は平手打ちした。憐れみをかけて与えた、最後のチャンスを拒絶した姫を陰陽師は睨みつけた。 『ならば呪具と成り果てるがいい。その偽善と慈悲に満ちた心を壊してな。姫の絶望が呪いをより強くする』  彼は指を鳴らした。スルスルスル……と臀部から糸を出しながら、逆さまになった三体の人蜘蛛が天井から降りてきた。  頭部は男性のもの。そして糸いぼの近くには人間の生殖器も備えていた。 『逃がしてしまったあの娘に代わり、姫が狂うまで犯され続けるといい』  陰陽師の許可を得た男蜘蛛達は、前脚を雫の衣服に掛けて一気に引き裂いた。露わとなった乳房と恥部。両腕を拘束されている雫には隠す手段が無かった。  この化け物は雫の家来達である。しかし知能と理性の大半を欠如してしまった彼らは性欲を剥き出し、かつて仕えた(あるじ)の性器にむしゃぶり付いた。 「くぅっ……!」  無遠慮に肌を舐め回され、雫は顔を(しか)めた。  それは泰史も一緒だった。裏切った姫の制裁を決めた彼であったが、まだ人の心が残っていたのか表情を曇らせた。 『……行くぞ、アツキ』  そして姫が蹂躙される場を、己に付き従う鎧武者と共に去ったのだった。 「あぐっ」  残された雫と男蜘蛛。一体が雫の股間へさっそく男根を挿入した。 「くうぅぅぅ……!」  腹部に伝わる圧迫感。雫がそれに慣れる前に男蜘蛛は高速で腰を動かした。 「あっ、うっ、うあぁっ」  まるで優しさの無い乱暴な腰使いによって、雫の身体が大きく跳ねた。 「くぅっ、ああ、ああっ」  他の個体が動かないように雫を押さえ付けた。これによって密着度が上がり、雫の恥部へ更に容赦の無い攻撃が加えられることとなった。 「うあああああ!!」  悲鳴が出た。生前に犯された時は声を噛み殺していたのに。 (マコト……マコト……)  初めて女の幸せを感じた多岐川との逢瀬。その大切な記憶が化け物によって塗り替えられてしまったのだ。  恋を知らなかった前なら耐えられた行為が、今や拷問に等しい苦痛となって雫を襲った。これが長く続けば本当に狂ってしまう。 「嫌っ、嫌あぁぁぁ!!!!」  逃れようと振った顔も固定され唇を奪われた。生臭い舌と唾液が雫の口内へ侵入した。 「んむっ、むうぅぅ~~!」  口、乳房、そして恥部の三ヶ所へ絶え間なく刺激が与えられた。敏感な部分を(こす)られ続けて思考が飛びそうになる。 (駄目……しっかり……。私が呪具になる訳にはいかない……!)  ズンッ、ズンッ、ズンッ、ズンッ、ズンッ。  深く、強く、男蜘蛛の生殖器が雫の奥へ何度も沈められる。脚が浮きそうになる。 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」  いつしか相手の動きに合わせて呼吸するしか出来なくなっていた。縛られている紐をギュッと握って、雫は下半身から意識を分散しようと試みた。  ドバッと腹の中が熱い液体で満たされた。男蜘蛛が彼女の中に精を放出したのだ。彼のモノが引き抜かれた後、雫の股間からは白い液体が垂れ落ちた。 「……っ」  一旦は三体の蜘蛛が離れたが、それは互いの位置を交換する為だった。休む間も無く、二体目の男蜘蛛が雫の前へ来た。 「……もう、やめて……」  懇願を聞く相手ではなかった。男蜘蛛は雫の右脚を持ち上げ、片足立ちとなった彼女の濡れる恥部へ自分のモノを挿入した。 「あうあぁぁっ!!」  先程とは違う角度で突かれた。今回も最初から激しく。新たな刺激に彼女の肉体は(こら)え切れず、ついに奥から痙攣し出した。  絶頂を迎えてしまったのだ。 「ふぐっ、うううっ」  男蜘蛛はガクガク震える雫の腰を押さえ付け、全く手加減なく腰を動かし続けた。揺れる乳房に興奮した別の一体が乳首に吸い付き甘噛みした。  雫は失禁しそうな強烈な刺激に必死で耐えた。 「うううっ……ううっ……」    雫の瞳から涙が(こぼ)れた。それが床へ落ちる直前、風が動いた。  絶望しかけていた雫は、虚ろな瞳で風の軌跡を追った。  「!」  雫は目を見張った。狂乱の宴へ踏み込んだ第三者が居たのだ。  その者は長い髪を揺らし、光る刀身を舞うように振るった。まだ若く少年に見えた。 『ギュウアアァァァ!』  雫と合体していた男蜘蛛の首が刎ねられた。切断面から噴き出した黄色い体液を雫は頭から被ることになったが、すぐに斬られた本体と一緒に霧散した。 『ギッ!?』 『ギガガガ!?』  仲間を殺された残り二体の男蜘蛛が糸を出そうとしたが、その前に少年の刃が一体を突き刺し、もう一体の胴体を切断していた。  剣の達人の早業(はやわざ)により瞬時に退治された魔物達。少年は塵と化した男蜘蛛を、怒りのこもった低い声で罵った。 『……愚か者どもが。再び姫に恥辱と苦痛を与えるとは』  闇に存在しながらも闇に心を(むしば)まれない黒衣の少年。  夜をも照らす、気高き(こころざし)を持つ彼の名を雫は呼んだ。 「灯夜(トウヤ)……!」
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