(一)

3/9
387人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
 そのイメージが頭を巡ると、拓弥はそれに歯を突き立てることはできなかった。なるべく歯に当たらないようにしながら、口に入ってきているブリトーの先端部分に舌を上下左右に這わせながら、翔太が恍惚の表情を浮かべているところを想像してしまった。 「どうしたの? 食べないの? おいしいよ」  表通りが見えるガラス窓の所に設置されたカウンター席の翔太は笑顔で隣の拓弥の顔をのぞき込んできた。  その瞳は悪戯っぽく笑っているが、汚れを知らなさそうな、綺麗な瞳をしていた。素直にこの状況を楽しんでいるのだろうと拓弥は思った。 (続く)
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!