(一)

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 突然のことに拓弥は何もできなかった。こういう経験は子どもの頃に母にしてもらうということもなかった。だからどうしたらよいかわからず、翔太のさせるままにした。 「加島君って子どもみたいだね」  翔太はそう言って子どものように笑うと、前を向いて再び自分のブリトーをかじり、ほおばった。  拓弥も、もう一口、同様にかじった。  先の翔太の出来事に、拓弥の心拍数は思いがけずに上がっていた。  学校のテスト期間中、拓弥が翔太と会ったのは、気分転換にランニングしていた際に神社で偶然出会ったときの一度きりだった。その後はテストが終わるまで連絡も取り合わなかった。その間ずっと翔太のことを考えるだけにしていた。ずっと会いたかった。ずっと我慢していた。 (続く)
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